今回は医療広告ガイドラインと医療広告ガイドラインQ&Aの禁止広告・表現総まとめになります。今までの回を読むの面倒、一覧でチェックしたい、復習のためになど、色々な用途でご利用いただけたらと思います。
医療広告ガイドラインの内容は全て大事なのですが、危険度を4段階に分けました。基準は個人的主観、医療広告ガイドラインでの表現(禁止されている、認められない、広告可能な事項ではないなど)、出現キーワード数などですが、一番は個人的主観です笑
あと、どこにそんな事書いてあった?、もっと詳しく知りたいという方のために、その項目に関連する記事へのリンクを括弧内に貼っておきました。参考にしていただけたらと思います。
危険度MAX
虚偽広告
- 「絶対安全」(第3回)
- 「必ず成功」(第3回)
- 「どなたでも○○が受けられます」(第6回)
- 「厚生労働省認可の○○専門医」(第3回、第7回)
- 加工・修正した術前術後の写真(第3回)
- 権利関係のない医療機器の画像(第6回)
- 広告可能事項の限定解除要件で予約専用電話番号(第7回)
条件付きで広告可能
品位を損ねる内容の広告
- 「キャンペーン実施中!」(第3回)
- 「○○療法50%OFF」(第3回)
- 「○○
100,000円50,000円」(第3回) - 「○○治療し放題」(第3回)
- 「無料相談をされた方全員に○○をプレゼント」(第3回)
誇大広告
- 「最高」(第3回)
- 「最先端」(第6回)
- 「最適」(第6回)
- 「安全な手術」(第3回)
- 「○○の症状のある二人に一人が○○のリスク」(第3回)
- 「こんな症状が出ていれば命に関わります」(第3回)
- 「〇〇手術は効果が高い」(第3回)
- 「知事の許可を取得した病院」(第3回)
- 「○○専門医」(第7回)
- 「痛くない治療」(第7回)
- 他の病院の写真(第3回)
- 病人が回復して元気になる姿のイラスト(第3回)
- 大きく表示された値段と小さな注釈(第3回)
- 活動実態のない団体による認定医や認定施設(第3回、第6回、第7回)
- 手術や処置等の効果または有効性を強調(第3回、第6回)
- テレビでの紹介による治療や生活改善法等の紹介(第3回)
誇大広告になりうる
患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談
- 患者自身の治療等の内容または効果に関する体験談(第3回、第6回、第6回)
- 家族等からの伝聞に基づく治療等の内容または効果に関する主観的な体験談(第3回、第6回、第6回)
- SNSでの治療内容または治療効果に関する発言(第6回)
公序良俗に反する内容の広告
その他
法令の規定又は国の定める事業のみ認められる
- 「○○センター」(第3回)
危険度大
比較優良広告
- 「日本一」(第3回)
- 「№1」(第3回)
- 「最高」(第3回)
- 「最良」(第6回)
- 「最上」(第6回)
- 「芸能プロダクションと提携」(第3回)
- 「著名人が推薦」(第3回)
- 「著名人も当院で治療」(第3回、第5回)
- 雑誌『日本が誇る50病院』など(第6回)
- 書籍『最新がん〇〇療法』『〇〇治療最前線』など(第6回)
- 記事風広告(第6回)
- 口コミ情報ランキングサイト(第6回)
条件付きで広告可能
治療等の内容又は効果に関する治療前後の広告
広告が可能とされていない事項
その他
危険度中
暗示的又は間接的な表現
条件付きで広告可能
広告可能な検査、手術、治療方法
危険度低
暗示的又は間接的な表現
広告が可能とされていない事項
広告できない診療科名
広告できない可能性のある診療科名
その他
禁止される表現、誇大広告等に該当するおそれがある表現
- 「最新」(第6回)
まとめ
8回にわたりまとめてきた医療広告ガイドラインも今回で一旦最後になります。
いやぁ、ここまでまとめるのとっっても大変でした。そもそもこのサイトを立ち上げる前に、医療広告ガイドラインの記事、第7回のQ&AまではいつかWEBで公開しようと思ってざっとまとめていたんです。で、いざこのサイトを立ち上げようと思って、再度医療広告ガイドラインやQ&Aを読み直しつつ自分がまとめていた文章を読み直したら、全然理解が違ったり、その当時勘違いしていたことが分かったりと大幅な修正が大量に…
やっぱり何度も真剣に考えながら読み進める事って大事だなと思いました。
何十回と読んで考え、多分こうだろうと思ってるのが今まで公開してきた記事になります。再度読み直すことで変更があるかもしれませんが、その点はご了承くださいm(_ _)m
というわけで、最後に医療広告ガイドラインと医療広告ガイドラインQ&Aで自分が一番重要と感じた事、医療広告ガイドライン遵守について、考えをまとめて終わりにしようと思います。
まず、自分が医療広告ガイドラインと医療広告ガイドラインQ&Aを読む上で絶対に押さえておかなければいけないと思ったのは2点です。
広告の定義
まず一つ目が広告の定義です。これは何度かお話ししていますが、広告の定義は以下。
法第2章第2節「医業、歯科医業又は助産師の業務等の広告」の規定による規制の対象となる医療に関する広告の該当性については、次の①及び②のいずれの要件も満たす場合に、広告に該当するものと判断されたい。
① 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
② 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)
「誘引性」と「特定性」を両方満たすものが広告の定義です。クリニックでも病院でも、なにかしら患者に情報を発信したいと思うんですよね。そんな時、色々考えて「これだ!」って思って発信しようと思った時、「医療広告ガイドラインに抵触してないだろうか…」って思うと思うのです。そんな時、まず考えるべきは誘因性と特定性、特に誘因性を満たしていないかどうかを考えるべきと思います。
限定解除
今までの回で何度もお伝えしている、読んでいるので、今までの回を読んで下さった方ならポイントは押さえているのではないでしょうか。一応、念のためにまとめておくと、広告可能事項の限定解除要件等のポイントはこちら。
- ウェブサイトなど患者が自ら入手しにいく情報
- 問い合わせ先の記載
- 治療内容、治療費用、治療期間または治療回数の記載(自由診療の場合)
- リスク、副作用の記載(自由診療の場合)
表面的にはこの情報だけ押さえておけば問題ないです。でも本質は限定解除要件の①に記載されているこれです。
① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
「医療に関する適切な選択に資する情報」
「医療」とは「選択」なんです。これを押さえておくと、なぜビフォーアフター写真や術前術後の写真や症例写真がダメなのか、患者の体験談がダメなのかなど、ほぼ全てが理解できます。
なんの説明もなく掲載されているビフォーアフター写真、良い事言って悪い事を言っていない体験談。全然選択じゃありませんよね?患者は「このクリニックに行けばこういう風に自分もなれるのか。」「良い事しか書いてないから良いクリニックなんだ。」って勘違いします。そんなはずはありません。その人の性別、年齢、症状、健康状態などによってそうなれるかは人によって異なりますし、体験談なんて一患者の意見です。だから、治療内容、治療費用、治療期間、リスクや副作用の記載が必要で、治療効果や治療内容に関する体験談はNG。
納得です。
自分は最初に医療広告ガイドラインと医療広告ガイドラインQ&Aを読んだ時、「あ、この表現は限定解除できるんだ。」とか「限定解除できる項目を覚えておこう。」と思いました。でもそれは間違っていました。
今では分かりますが、どの表現、内容でも限定解除の対象なんです。つまり限定解除要件を満たせるのであれば広告できる。でも医療広告ガイドラインやQ&AでNGと書かれている表現や内容はよく考えると「医療に関する適切な選択に資する情報」ではないんですよね。だから広告できないんです。
ちなみに、医療広告ガイドラインで「医療に関する適切な選択」というワードは12回、「選択」に至っては31回も出てきます。どれだけ大事なのかが分かると思います。
医療広告ガイドラインの完全遵守
完全遵守なんておかしな日本語ですが、敢えてそういう表現にしました。医療広告ガイドラインの遵守ですが、現状では無理だと思っています。
なぜ無理なのか。それは先生多忙でホームページを見ていない、管理する余裕がない、管理会社の医療広告ガイドラインに対する知識、契約上のサービスなどなど。色んな要因があると思います。多分、医療広告ガイドライン遵守は現状では難しいという事は偉い人も分かっています。とはいえ医療機関のホームページでトラブル多い、人の命に関わる。なので野放しにはできない。だから、何年かかけて医療機関のサイトが患者にとって「医療に関する適切な選択」ができるようにしていこうと考えているのでしょう。
難しい問題と思います。例えば症例をたくさん掲載しているけど限定解除要件を満たしていない医療機関A。症例を全く載せていないけど医療広告ガイドラインに則っている医療機関B。一患者としては、医療機関Aを選択すると思います。でも医療に関する適切な選択かと言われるとそうではないし、とはいえGoogleはGoogleで検索順位付けるし。ホント、難しいと思います。
まず最初にやるべきこと
医療広告ガイドラインを守った医療機関ホームページにするためにまずやるべきこと。それは4段階に分けた危険度MAXの虚偽広告や誇大広告などがホームページに掲載されていないかを確認、修正することと思います。それから順に危険度大、危険度中と修正していくのが良いのではないでしょうか。これは何度も言っていますが、あくまで個人的主観で危険度低でも保健所などから指摘を受けることもあると思います。その点はご了承ください。
最後に
医療広告ガイドラインが改正されてまだ1年とちょっと。これからでしょうね。気になるのは2007医療広告ガイドラインで広告できないとされていたものを平気で広告している医療機関はあったので、2018医療広告ガイドラインでも同じようなことが起きないか気がかりなところではありますが…
医療広告ガイドラインを読んだことのある方も、そして読んだことのない方も。
この自分のまとめを信じず、「医療広告ガイドライン」で検索して上位に出てくる医療系ホームページ制作会社、コンサルタントや専門家、医療情報サイトのまとめを鵜呑みにせず、「医療広告ガイドラインを読む」ことをお勧めします。自分は何度も読み返し、考え、理解が深まりました。読んだことのない方は新鮮な目で読めると思いますし、読んだことのある方は新たな発見、気付きがあると思います。
最後になりますが、自分のまとめた医療広告ガイドラインの記事がほんの少しでも誰かの役に立ちますように。そして、医療機関のホームページが患者にとって医療の適切な選択の一助となりますように。
全8回と長い回になりましたが、全ての記事を読んで下さった方、そしてこの記事を読んで下さっている方、本当にありがとうございます!
お役立ちリンク集
厚生労働省の医療広告ガイドライン関係
文献医療広告ガイドライン – 厚生労働省
文献医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)に関するQ&Aについて
参考医療機関ネットパトロール 医療広告ガイドラインに違反している疑いがあるウェブサイトの情報をお寄せください
厚生労働省の医療広告ガイドライン以外
文献広告可能な診療科名の改正について – 厚生労働省
文献医療に関する広告が可能となった医師等の専門性に関する資格名等について – 厚生労働省
美容医療関連
参考公益社団法人 日本美容医療協会[JAAM] /美容医療広告について
参考公益社団法人 日本美容医療協会[JAAM] /美容医療広告について/美容医療クリニックを受信される患者さんへ
予防接種関連
文献「予防接種制度の概要等について」(公益財団法人予防接種リサーチセンター開催 平成28年度予防接種従事者研修会資料より抜粋)
参考日本の予防接種スケジュール – 国立感染症研究所
参考ワクチン接種を受ける人へのガイド検索 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
治験関連
参考医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
文献医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令 – 東京都福祉保健局(PDF)
患者向け
参考産科医療補償制度について – 厚生労働省
参考産科医療補償制度の概要|加入分娩機関検索 – 公益財団法人 日本医療機能評価機構
参考公益社団法人 日本美容医療協会[JAAM] /美容医療広告について/美容医療クリニックを受信される患者さんへ
参考健康被害 – リスクが潜む個人輸入 – あやしいヤクブツ連絡ネット
参考医療機関ネットパトロール 医療広告ガイドラインに違反している疑いがあるウェブサイトの情報をお寄せください
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